イギリスのEU離脱は進展か後退か?

イギリスのEU離脱に関してEU側との合意がされました!
長かったですねー、ここで改めてEU離脱問題(ブレグジット問題)について再度おさらいをしていきたいと思います。
なぜイギリスはEU離脱をしたがったのか?
まず、EUは人や物の移動を自由にするという目的もあり、設立された仕組みです。
通常であれば、国をまたぐ時は色々と面倒なチェックがあったりしますよね。
EUはそれはありません。
そしてEUは加盟国全体で難民や移民の受け入れなどを多く行っています。
となると、EU加盟国民も含め、難民や移民も経済力や社会保証が充実しているイギリスに移住したいという人も多くなってきます。
そうです。
イギリスからすると、難民・移民のイギリスへの移住が大きな問題でした。
イギリスには年間約20万人の「人の移動」が起きていたのです。
急激に国外からの人間が増え、あれよあれよと膨らんでいく社会保証費。
受け入れをする事で、確かに労働人口やGDPは増えますが、難民や移民は基本的に貧困です。
費用対効果で考えると、国内経済の中では大した経済力にはなりませんし、元々の国民からすると十分な社会保証が受けにくくなる、またはサービスの劣化が懸念されていました。
また、人が増える事によって、肝心のイギリス本土の土地や家賃も値上がりし、元々の国民生活も圧迫されていきました。

また、離脱賛成派には自国の権威を復活させたいという思いもありました。
かつでのイギリスはご存知のように世界中のあっちこっちを支配していた大国です。
経済も強い、国としても強かったのですがEUに加盟してからはEUの法律に従わなくてはいけなくて、自国のみで政策を推し進めるというのが困難になったのです。
例えば、貿易にしてもイギリスが独自で加盟国以外の国と貿易に関する協定を結ぶことはできません。
基本的にEUを通して、EUとして貿易協定を結ぶのです。

財政圧迫の問題と、貿易も自由にできない。
かつてのイギリスを取り戻そう!ということで、イギリスはこの離脱問題を国民投票で決めよう!と投票を実施。
結果として離脱派が多く、離脱に向けて動くのかと思いきや、もうこれがトンデモなく難航していくのです。
アイルランドの国境管理問題
国民投票で離脱賛成が多数となりましたが、
ここで問題になったのが、アイルランドです。
イギリスを構成する図を見てみましょう。

アイルランド島はアイルランドと北アイルランドに別れています。
北アイルランドはイギリス領になります。
アイルランドは元々イギリスが統治していた島なのですが、アイルランドは独立し、北アイルランドはイギリス領のままという事になりました。
北アイルランド紛争というものなのですが、これはまた別の機会に説明したいと思います。
そして、イギリスがEUに加盟した事によって、アイルランドと北アイルランドには事実上、国境問題は無くなりました。
しかし、イギリスが離脱をした場合、この国境は復活する事になります。
そうなれば、また紛争の火種になりかねません。
イギリス・EU両国とも厳密な国境管理はしたくないのが理想です。
動き出したEU離脱
上記に記載したようにEU離脱の大きな障壁となったアイルランドの国境管理問題。
厳密に国境管理をするとなると、アイルランド島の分断にもなっていまい、過去の紛争が再度起きてしまう懸念もあります。
という事で、明確な国境管理をしないために、アイルランド国境管理問題の安全策(バックストップ条項)として
EU側が提示した条件は、
イギリスがEU離脱をした後も北アイルランドはEUの関税同盟内にとどまる。
というものでした。
そうすれば、国境管理など必要なくなります。
でもそうしてしまうと、北アイルランドとイギリスを分断させかねない事態になります。
さすがにイギリス側もそれは飲めません。
そこで当時のイギリス首相であるメイ首相は以下の条件に変更してEU側に再提示。
イギリスはEUを離脱した後も、期間を定めてEUの関税同盟内に留まる。その間に国境問題の解決案を探る。
北アイルランドに限らず、イギリスそのものがEUの関税同盟内に留まるという提示をしました。
ただ、イギリス議会ではこれに対して大紛糾!

という感じで、イギリス議会でこの案は否決となります。
EU側も、

という反応でした。
出口の見えなかった離脱合意案がまとまった!
その後、幾度となく、イギリス国内やEU側での調整が図られてきましたが、どれもこれも否決否決。
まったく、出口が見えなくなってしまいました。
そんな中、先日2019年10月17日(木)についにEU側との合意案がまとまりました。
まとまった大筋の合意案は以下の内容になります。
■関税に関してもイギリス全体(北アイルランドも含め)としてEUの関税同盟から抜ける。
イギリス本土から北アイルランドに物品が持ち込まれる場合は、もちろん関税は無し。
ただし、これがさらにアイルランドに持ち込まれる場合は関税が発生します。

そして、これらは個人間の荷物の取引については関税は発生させない事としています。
■北アイルランドでは物品を対象にEUの規制・ルールに従う。
例えば、安全性や衛生面などの問題でEUで規制されている物品は数多くあります。
そういったものは今まで通りEUのルールに沿って取引を行う事となります。
なので、例えば、イギリス本土から北アイルランドに入ってきた物品に関しては、検査が入る事になります。
検査は基本イギリス側の検査官が行いますが、EUはより強い権限を持った職員を派遣し、EU側の職員が不適切だと思ったものはEU側の職員に従わなくてはなりません。
■消費税
物品に限って北アイルランドはEUの消費税(付加価値税(VAT))が適用となる。サービス類には適用されない。
■離脱後も2020年12月31日まではイギリスはEUのルールに従い、EUへの予算も拠出する。
離脱後の混乱を避けるため、移行期間を設けます。その間、イギリスは今まで通りEU側にEU予算を支払わなければいけません。
その間にEUにあるイギリス企業は対応を進めなければなりません。
■EUからイギリスにきたEU市民は離脱後も引き続き、イギリスの社会保障を受ける事ができる。
■この状態を維持させるかどうかは北アイルランド議会へ委ねる。
4年ごとに北アイルランド議会は離脱後の状態について協議を行い、どのようにしたいかをイギリス・EUに対して提言する権利を持ちます。
■イギリスは清算金をEUに支払う。
離脱決定後、イギリスはEUに対して清算金として、日本円換算で約4兆円を支払う事となっています。つまり手切れ金ですね。
なんかこれ、まとまってんのかまとまってないのかよく分からない状態ですよね結局のところ。
イギリス議会は承認せず
2019年10月19日(土)にイギリス議会は合意案についての緊急議会を開いたのですが、これは否決となりました。またまた否決・・もう何回目なんでしょうか・・。
否決となってしまったので、イギリスはEUに対し、離脱延期についての要請をしなければなりません。延期要請は以前、イギリスの議会で否決となった場合はEUに対して延期要請を出すという法律が決まっているからです。
ただ、現イギリス首相のボリス・ジョンソンはEUに対して次のような手紙を3通送っています。

とりあえず、イギリスの法律に乗っ取って、否決となったから延期要請の手紙を送るわ。みたいな挨拶程度の文章

イギリスの法律に乗っ取ってこんな内容、あんな内容でとりあえず延期要請します。

こちらとしては離脱延期するつもりは無いからね。

という状態になりました。
これはもう世界を笑わすためのイギリスとEUの盛大なコントです。
2年以上も時間をかけて、何度同じ事をやっているんですか。
EUが延期をしないという事は考えづらいのですが、延期が成立したら次は2020年1月31日までとなります。
つまり来年の1月末ですね。
相場への影響
この数日間で合意!否決!となった動きですが、ポンド相場はどのように影響を受けたでしょうか?

ポンド円相場では合意発表から2円近く値が上がりました。
ただ、本日の相場はチャートに約1円近くの窓を開けての下落基調でスタート。
さすが殺人通貨ポンドです!
と言いたいところですが、EU離脱は大きな問題なのでこれくらい動いても不思議ではないですね。
想定内の動きというところです。
殺人通貨という物騒なネーミングですが、ポンドは普段から大きな動きをする通貨なので、大きく稼ぐチャンスがたくさんあるという事になります。
しっかり動向を見て、取引チャンスを掴みましょう!