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香港の危機再び!香港国家安全法で世界が動く!

5月28日、中国で開催されていた全人代(全国人民代表大会/中国の国会)が閉幕しました。最終日に採択されたのが「香港国家安全法」の制定方針。

実際の法律は本年夏ごろ制定される見込みですが、早くもこの採択を巡って世界が揺れています。

香港国家安全法とは

簡単に言うと「反体制活動が禁止される」ということです。
具体的には、

  1. 中国からの独立を求める運動
  2. 中国政府に反対する行為
  3. テロ行為
  4. 香港に干渉する国外勢力による活動

を規制する内容が盛り込まれると予想されています。

逃亡犯条例と何が違う?

昨年撤回されたの逃亡犯条例改正案は、「犯罪容疑者の中国本土引き渡し」を可能にする法令案でした。
逃亡犯条例改正案については以下の記事にて。

それに対し、今回の香港国家安全法とは「どういったことをしたら犯罪になるのか?」という犯罪者の定義に踏み込む内容です。
実現すれば、より中国政府の香港への干渉がより強まることは間違いないでしょう。

各国の反応

採択前からスタートしていた米中の舌戦

5月26日にトランプ大統領は

トランプ大統領 トランプ大統領
国家安全法について米政府は強力な対応を準備している!

と早くも発言。
中国外務省は、

中国 中国外務省
我々はいかなる外国の干渉も受け入れない。
外部勢力が香港に干渉する間違った行動を取れば、対抗措置を取って反撃する!

と応酬。

しかし、大半の国々が本法案に対して、懸念の意向を明らかにしています。

台湾当局は「中国共産党は民意を顧みず、横暴なやり方で香港の民主主義と自由、そして法治を深く傷つけた」 と表現。

さらに日本では菅義偉官房長官が「議決が国際社会や香港市民が強く懸念する中でなされたことや、香港の情勢を深く憂慮している」と発表しました 。

日本はややトーンを落としているものの、当事者意識の強い台湾は明らかな反対表明です。台湾の中国に対する危機意識が相当に高まっている様子がわかります。

4か国共同声明

採択と同日、アメリカやイギリス、オーストラリア、カナダの4か国は共同声明を発表しました。

ここに、1997年の6月イギリスの大学教授によって書かれた論文「イギリスから見た香港返還」 があります。この中に大変興味深い記述をみることができます。

現在の香港が20世紀後半を代表する近代都市となり、一人当たり平均所得で宗主国のイギリスを上回り、イギリス統治下に成立した効率の高い、公正な行政機構、自由や法律に基づいた制度などの要素が現在の香港サクセスストーリーを可能にした。

イギリス人は香港の経済的繁栄を誇りに思う半面、その香港が独立できず中国に返還されてしまうことに心を痛めているのである。(中略) 中国政府が独裁政権であり、時に国民に対して非常に残酷であるのをみて、イギリス市民は返還される香港に対して良心が痛むのである。

この論文が書かれたのは今から23年前。
当時危惧されていたことが、解決することなく21世紀の今、現実になろうとしているのです。

再燃するデモ活動

香港では国家安全法に対する抗議活動が発生数千人がデモに参加、180人以上の逮捕が出ました 。
警察香港のデモといえば、昨年の「逃亡犯条例」に反対した大規模デモが記憶に新しいところです。
しかし、振り返ると香港では、

2003年表現の自由制限する条例案に対して
2012年中国が学校の教育内容を変更しようとした為
2014年中国が香港の選挙に介入しようとした為

と幾度にわたりデモが起きています。

今後は、(事態の解決は全くしないものの)デモの激しさは少しトーンダウンしていくのかもしれません。

ところで、なぜ香港のデモ参加者は大学生などの若者が中心なのでしょうか?
昨年の調査では「自分は何人かと思うか?」との問いに対し、「中国人である」と答えた人は1割と少数派であるのに対し、「香港人である」と回答した人は5割と約5倍の差をつけています。

さらに、若者に限定した調査では7割もの人が「自分は香港人」であると認識しているのです。香港はもともと中国であった為、年配の方々やそうした親に育てられた人々は自身を「中国人」と認識しています。

しかし、数年おきにデモが勃発し、インターネットを使い世界の情報にリアルタイムに触れて育った若者世代は、情報統制などが敷かれている中国に対してよい感情を持っていません。

従って、自治独立を訴えるデモは若者中心に動いているのです。

アメリカが声高に中国を非難するわけ

ご存じのとおり、11月には大統領選が控えています。
足元ではコロナウィルス感染拡大により米国経済は経済最悪、失業率は世界恐慌来の高さであり、トランプ大統領の戦況は決して安泰ではありません。

トランプ大統領は「ビジネスマン」としての評価は高いものの、歴代大統領が演じてきた「自由と人権の番人」の色が薄い印象でした。

「香港」の人々の自治、人権尊重を支持する姿勢などをアピールすることで、選挙戦における支持層を拡大の格好の機会として利用する可能性も十分考えられます。

今後どのような事態が発生する可能性があるのか?

米国株式市場

トランプ米大統領は29日、「米国が香港に認めている優遇措置の廃止に向けた手続きに入る」と発表しました 。今まで認めていた制裁関税の不適用などの特別な配慮を無くすことを宣言したのです。

香港の若者の中にはこうした米国による中国への制裁を歓迎する向きもあるようです。中国も報復措置を出してくることが想定されるので、米中貿易関係は当面悪化の一途をたどる可能性が高いです。

この結果、鎮静化していた米中貿易摩擦が再加熱し、米中両国の景況感が悪化することが考えられます。株式市場に「IT産業」や「ヘルスケア産業」の比率が高くアフターコロナ後も成長が期待できるという側面があることを差し引いて考えたとしても、現在の米国株は、高すぎる水準にあります。

したがって、想定されている米中貿易関係悪化以上の出来事が発生した場合は、大幅に下落、株価の水準訂正が行われることも十分ありえるでしょう。

為替相場

米中緊張感の高まりを背景に、既に米ドル-中国人民元レートは年初より元安基調がみられ、5月31日は7.13ドルまで下落しています。これは米中貿易摩擦が激化した昨年夏以降とほぼ同じ水準です。

今後中国富裕層が、資産を中国から、外国に移す動きが加速することも想定される為、当面は元安基調が継続することが推察されます。

香港ドルは「ドルペッグ制」といって、米ドルと香港ドルの動きを連動させる制度下にある通貨です。
イギリスの外相は、香港の独立性が失われるのであれば「香港ドルの米ドルペッグ制が崩壊するという「悲しい現実」を目の当たりにするかもしれない」と発言し、国家安全法への警戒と共に、通貨制度の維持に警鐘を鳴らしています 。

一方、米ドルは米国株式同様、足元では不思議な強さを見せています。ちょっとした出来事に過剰反応し、振幅の大きい米ドル相場がやってくることも十分考えられます。

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かみきち
執筆者:かみきち
金融、証券業界に20年以上従事。 様々な相場をリアルタイムに経験してきているマーケット村の住人。 講師経験も豊富。