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南シナ海の米中対立

南シナ海を巡って米中の攻防が続いています。
今回は南シナ海で何が起こっているのかを解説していきたいと思います。

各国が領有権を争う南シナ海

南シナ海とは、中国南部とインドシナ半島、フィリピン、インドネシアなどに挟まれた海域のことです。この海は世界有数の重要な航路で、多くの船が行き交う海域です。

南シナ海

南シナ海には小さな島々が点在しており、その数は200を越えます。
各国は、それらの島々の領有権をめぐって対立しています。
その理由は島々を確保すれば、その周囲の12海里(約22.2km)は領海となり、他国の艦船を排除できるからです。

また、島を確保すると、それを起点に排他的経済水域を主張できます。
そうなれば、漁業資源や地下資源について独占権を主張することが可能となります。

南シナ海で領有権争いが起きる理由

南シナ海で周辺国が領有権争いをする理由は、この海域が交通上の重要路であり、漁業資源や石油・天然ガスなどの鉱産資源に恵まれているからです。

周辺の海をコントロールする制海権

まず、交通についてです。南シナ海を通過する船は世界貿易の3分の1とされ、年間5兆3000億ドルもの取引が南シナ海を介して行われます。
日本や韓国、中国など経済力がある国々は、中東や東南アジアから南シナ海を通じて多くの資源を輸入し、製品を輸出します。

海上交通ルートを「シーレーン」といいます。
世界の中でも重要なシーレーンである南シナ海を影響下に置くことで、南シナ海のシーレーンをつかってモノを輸出入している国に圧力をかけることが可能となります。

シーレーンを抑えるためには、ルート近辺にある島々を抑え、軍事施設を建設するのがもっとも効果的です。そうすることで、周辺の海をコントロールする制海権を得ることが可能となります。制海権を得ると、どのようなことが可能となるのでしょうか。

例えば、中国が南シナ海の制海権を得た場合、日本やアメリカ、それに味方する台湾などの船の航行を妨げ圧力をかけることが可能となります。逆に、中国が南シナ海の制海権を失えば、アメリカによる経済封鎖にさらされるかもしれません。

漁業資源の獲得

次に、漁業資源です。南シナ海は世界でも重要な漁場の一つです。
漁業関連で370万人の雇用が確保され、年間数千億円もの売り上げをあげてきました。しかし、各国による水産資源の乱獲で漁獲量は減少の一途をたどっています。

自国周辺から魚がいなくなったため、多くの漁業者はより遠くの海域に出漁するようになりました。場合によっては、各国が領有権を争う海域にまで進出します。

地下資源の獲得

もう一つは石油や天然ガスなどの地下資源の存在です。
2008年、中国政府は南シナ海における石油埋蔵量は246億トンと推計しました。

その30年ほど前に国連が行った調査でも南シナ海の石油埋蔵量は150億トンと見積もられています。これは、産油国として知られるイランやイラクに匹敵する規模です。周辺諸国は豊かな漁業資源や地下資源を求めて激しく対立しているといえます。

中国が主張する「九段線」と近年、中国が推し進める南シナ海進出

南シナ海で領有権争いをしている6つの国のうち、最も広い範囲の領有権を主張しているのが中国です。

中国は、「九段線」という領有権を設定し、自国領域として主張します。「九段線」は中国本土からまるで牛の舌のように伸びていることから「牛舌線」ともよばれます。

中国が主張する九段線の範囲
中国政府による漁船団の武装化

近年、中国は南シナ海での漁業資源や地下資源の確保を本格化させています。
まず、中国政府は自国の漁業者に補助金を出して漁船団を武装化させました。
南沙諸島で操業する船には特別な補助金も支給します。

中国政府による人工島を利用した実効支配

次に、南沙諸島なんさしょとうの7つの岩礁を埋め立て、人工島を作り上げました。これらの人工島には軍事施設や滑走路が建設され、南沙諸島なんさしょとうの実効支配を着実に進めています。

中国政府は、人工島は自国の領土だとして12海里の了解を主張します。この主張を日本政府やアメリカ政府は認めていません。

天然ガス採掘プロジェクト

これらに加えて、中国政府は南シナ海での天然ガス採掘プロジェクトを進めています。現在、海南島のすぐ近くでガス田が建設されています。このガス田は中国本土に近い海域ですが、将来的にはもっと遠くの地下資源の採掘を行うかもしれません。

個別交渉で東南アジア各国の切り崩しを図る中国

強引に進出をはかる中国に対し、東南アジア諸国は結束して対応しようとしました。ベトナム・マレーシア・フィリピン・ブルネイの各国は2010年に開かれたASEAN(東南アジア諸国連合)の地域フォーラムで、南シナ海問題を重要な議題の一つとして取り上げました。

とはいってもASEAN諸国としては中国との全面対決は避けたいという思惑があります。ASEAN全体との対決を回避したい中国は、個別交渉で南シナ海問題を有利に解決しようと模索します。

その代表的な動きが、フィリピンと中国の交渉です。
フィリピンのドゥテルテ大統領は新型コロナウイルスのワクチン提供と引き換えに、中国に歩み寄る姿勢を見せたのです。

多国間交渉と異なり、二国間交渉ではお互いの国力の差がモノをいいます。
経済的な見返りと引き換えに、南シナ海問題で中国に譲歩する国が今後も出てくるかもしれません。

そうなると、ASEAN内部で中国寄りの国と、アメリカ寄りの国が分断される可能性があります。冷戦中、米ソの対立に巻き込まれた東南アジア諸国がその二の舞を避けたいのは当然のことでしょう。

結束を図りたいASEANと分断したい中国の攻防は今後も続くと思われます。

中国の行動に待ったをかけるトランプ政権の対応とは?

2020年に入ると、中国の南シナ海進出が活発化しました。
2020年1月には中国漁船がインドネシアの排他的経済水域に侵入して操業し、インドネシア海軍が出動しました。4月にはベトナム漁船と中国海警局の船が衝突し、ベトナム漁船が沈没します。

こうした南シナ海での中国の行動に待ったをかけたのがアメリカのトランプ政権でした。2020年7月、アメリカ海軍が空母2隻を派遣するという異例の対応を取りました。その上で、ポンペオ国務長官は中国の南シナ海での海洋権益の主張は完全に違法だとして中国を強くけん制したのです。

これまで、アメリカは南沙諸島なんさしょとうを含む南シナ海での領有権争いに深く関与してきませんでした。当事国同士が平和的に解決するよう促してきたのです。この方針転換に中国は強く反発しました。

一方、アメリカも引きません。
そのため、米中両国は軍事演習を繰り返し、中国は中距離弾道ミサイルも発射します。また、アメリカは中国の24の企業に南シナ海での人工島建設にかかわったとして制裁を科しました。

こうして、南シナ海問題は隣接諸国による領有権争いから米中対立の争点へと変化したといえます。

まとめ

南シナ海は世界でも屈指の重要な海です。重要な交通網の一部であることや、世界有数の漁業資源・地下資源が存在する海だからです。そのため、南シナ海の領有権をめぐって、中国など6つの国が対立を続けています。

経済力や軍事力に勝る中国は、南沙諸島や西沙諸島の実効支配を進める一方、各国との個別交渉で事態の打開を図ろうとします。

2020年に入ると中国の南シナ海での活動が活発化しました。これに対し、アメリカのトランプ政権は従来の中立的な立場をやめ、中国の南シナ海進出を非難します。これにより、南シナ海での米中対立が激しくなりました。

新型コロナウイルス対策やアメリカ大統領選挙の行方によっては、中国が再び南シナ海での活動を活発化させるかもしれません。今年成立するアメリカの新政権がどのような対応をするか、慎重に見極めるべきではないでしょうか。

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元予備校講師X
執筆者:元予備校講師X
社会科講師歴10年以上の元予備校講師。 学習塾での講師経験を含めると15年以上、社会科講師として教壇に立っていました。 現在はニュース解説記事などを書いてWeb上にアップしています。 目下の関心事はアメリカ大統領選挙とコロナショックが世界経済にどのよう影響を与えるかです。